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NISAに潜むリスク(第2回)

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NISAに潜むリスク(第1回)

証券業界の黒歴史から繋がるNISA

失われた20年 2008年のリーマン・ショック以降低迷していた証券業界は、今まさに花が一斉に咲いたように活気付いています。それは一昨年末に誕生した安倍政権が打ち出したアベノミクスによって、株価が上昇したからでしょう。証券業界がNISAに力を入れているのは、今のうちにその余勢を駆って顧客の囲い込みを始めようと虎視眈々と狙っているように思えます。雌伏すること4年余り、ここに至るまでには証券業界にとっては厳しい道程の連続であったと言っても過言ではないかもしれません。
 証券会社ではバブルが崩壊する1980年代後半まで、顧客とセールスマンとの間で一任勘定よる売買が行なわれ、それを良いことにセールスマンは手数料を稼ぐため異常なほど頻繁に売買を繰り返して顧客に損失を与え、「一任されていた」、「任せた覚えはない」というトラブルが発端となり、やがて損失補填事件を生む原因となりました。
 そのため大蔵省(当時は橋本龍太郎大蔵大臣)は損失補てんの禁止・一任勘定での売買を禁止する証券取引法の改正を1991年10月5日公布し、翌年1月より施行され一任勘定は登録した投資顧問会社しか認めないようにしました。

 バブル崩壊とともに大量の不良債権を抱えた金融機関はその処理に追われ、以後「失われた20年」といわれる経済不況に晒されることになります。
 証券業界では1997年11月3日、三洋証券が子会社でノンバンクの三洋ファイナンスへの保証債務が巨額に上り支えきれずに経営破綻。その後野村證券、大和証券、日興証券とともに日本の「4大証券会社」の一角であった山一證券が「飛ばし」により、同年11月24日に自主廃業に追い込まれました。

 その後、金融機関の倒産は証券会社だけでは済まず、銀行業界では三洋証券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行と立て続けに経営破たんし、日本経済は未曽有の金融不況に見舞われることになります。

 それまで民間の銀行に対する支援に及び腰だった政府も、流石にヤバいと思ったのでしょう…金融危機回避のために公的資金の投入を決断し、ひとまず金融危機は回避されます。しかし政府も厚生年金や国民年金の積立金の一部を、財政投融資を通じて株式市場で運用していたため、大きな損失を出し、公的年金制度が崩壊するとの憶測から国民年金の納付率が悪化。また民間の銀行や企業が持つ有価証券は多額の含み損を抱えており、政府にとっても景気回復のバロメーターでもある株価回復が政策課題となっていきます。

 やがて銀行業界が金融秩序を取り戻していくと、次に政府が手を付けたのは低迷する証券業界の救済になります。株価の低迷により個人株主の多くは証券市場から離脱していった。大蔵省(当時は宮澤喜一大蔵大臣)は不況に喘ぐ証券業界の窮状を受け入れ、政府自らも「預金から投資」を推奨するようになり、今まで禁じていた「一任勘定」を一転して容認するという政策転換に踏み切った。そこで証券業界の救世主として登場したのが個人投資家向け限定の一任勘定取引、「ラップ口座」と言われるものです。

 ラップとは英語の「Wrap(包む)」という言葉に由来しており、各種の売買手数料を年間の手数料の中に含む(包む)という意味から「ラップ」と名付けられたと言われています。
 ラップ口座は、「証券会社や信託銀行などの金融機関が、投資家と投資顧問契約(投資一任契約)を結び、投資家と相談して決めた投資方針に沿って、投資家の資金を国内外の株式や債券、投資信託、商品、ヘッジファンドなどで運用・管理する」商品です。
 この「ラップ口座」は個人に限定した商品であり、証券会社に投資顧問業務参入と株式売買手数料の自由化を認め、かつ安定した手数料収入を得ることができると共に、今まで証券会社に禁止していた一任勘定を公に認める画期的な商品だったと言えるでしょう。年金基金などの大口の機関投資家は、巨額の資金運用を投資顧問会社や生命保険会社、信託銀行などに委託するのが一般的であるが、個人投資家でも「ラップ口座」を利用すると、資金運用を証券会社や信託銀行などに一任することができるメリットもありました。

 小渕恵三内閣が発足した1年後の1999年10月、不況が続く証券業界の救世主として鳴り物入りでスタートした「ラップ口座」でしたが、いざ蓋を開けてみると顧客に膨大な自己売買の記録を書面で開示しなければならなかったために事務負担が重く、参入する証券会社は限られ当初の思惑から大きく外れることになった。
 一方顧客も100万円を限度に運用ができるNISAとは違い、ラップ口座を利用するためには、比較的まとまった運用資金が必要だったので、野村証券等の大手証券会社には最低でも数億円以上という制限が加えられているなど、個人投資家が簡単に出せる金額ではなく、証券業界全体の足並みが揃わなかったこともあり、なかなか普及しませんでした。

小泉内閣の資金投入で息を吹き返した株価

 2020年に開催される東京オリンピックの大会組織委員会の委員長に、元内閣総理大臣の森喜郎氏の就任が決まりました。

 森氏は総理大臣時代、蜃気楼と揶揄されており、その後を受けて2001年9月22日、第1次小泉内閣が誕生。小泉純一郎首相は「構造改革」を旗印に、民間人の竹中平蔵氏を内閣府特命担当大臣に任命し、金融・経済財政政策を担当させることになったが、その年末の日経平均株価は10,542円(前年比▲3,243円)、翌02年末は更に下落し8,578円(前年比▲1,963円)と1万円台を切る水準まで低下。03年末になってやっと1万円台を回復したものの、日本経済はデフレスパイラルが続き日経平均株価も暗いトンネルから抜け出すことはできなかったのです。

 そこで郵政民営化とともに規制緩和を掲げる小泉首相は不況に喘ぐ証券業界をてこ入れするため、金融政策を転換し株式投資を促す経済政策を打ち出しました。そのため第2次小泉内閣(2003年11月19日~04年9月27日)でも留任した竹中大臣は低迷する証券業界の要望を受け入れ、数々の制約があり低迷していた「ラップ口座」の規制緩和を認める方針を打ち出します。

2000年~2006年の日経平均株価推移
2000年 13,785.69
2001年 10,542.62
2002年 8,578.95
2003年 10,676.64
2004年 11,488.76
2005年 16,111.43
2006年 17,225.83

 2004年4月からラップ口座は書面開示の義務の撤廃と最低預入額が引き下げられ、中堅証券会社に対する預け入れ最低限度額は2,000万円と大幅に引き下げられることになりました。まあそれでも金持ちの為のという感がありますけど…
 04年12月末の日経平均株価は11,488.76円でしたが、小泉内閣が進める大胆な規制緩和策がやっと実を結び05年12月末には16,111.43円と大幅な値上がりを見せ、株価上昇の追い風を背景にラップ口座も順調な収益を上げる商品となり、ラップ口座は急速に普及するようになっていきます。

 05年10月31日に発足した第三次小泉内閣で内閣官房長官を務めていた安倍晋三氏が、06年9月20日に行なわれた自民党総裁選に出馬。小泉首相の後継として立候補した安倍晋三氏は464票を獲得し、対立候補の麻生太郎氏(136票)、谷垣禎一氏(102票)に圧倒的な差をつけて選出され、06年9月26日に第90代内閣総理大臣に就任。

 その年の12月末の日経平均株価は17,225円と過去7年間の最高値を記録。順調なスタートを切ったかに見えた安倍内閣だったが、発足直後から複数の閣僚による不適切発言と「政治とカネ」の問題、杜撰な実態が発覚した年金記録問題、小泉改革の負の遺産と言われる格差社会の深刻化の問題などが噴出し、前途多難な政権運営を余儀なくされる事態に追い込まれることにります。

政治の勉強状態になってますが、NISAの生まれた経緯なのでまだお付き合い下さい。

NISAに潜むリスク第3回につづく(10日あたりに追加します)

それまではNISAの落とし穴を参考にして下さい!

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